ワイアームに気を取られ、支援がいることに気付かなかったのは、観測・監視部の落ち度である。

だが、もっと早くに、全体への情報が伝達されていれば、状況は違っていたのかもしれない。

あの少女が、こんなにも危機に陥ることもなかったかもしれない。

静かに、東海林少佐が支倉へ耳打ちする。

「――司令」

「……」

「処断につきましては、今は……」

「……そうだな。――赤沢」

優先すべきは、クリムゾン機の劣性打開である。

「上空のベルヴァーについて、わかっていることは」

「はっ」

赤沢が規律通りの返答をしたことで、場の空気がもとに戻った。

だれもが止めていた時を、息を、再び刻み始める。

「上空のベルヴァーは、高度4000メートルに滞空。発見時から、まったく動いていません」

「バリアについては」

「成分については一切不明ですが、0・00003秒の一瞬で、エネルギーの幕を発生させているようです。単純計算でも、このバリアを撃ち破るには、ギルディウスの主砲によるゼロ距離射撃しかありません」

「っ。そのギルディウスは両手が塞がっているだろうに」

支倉に、いつもの皮肉っぽい口調が戻る。