「なにをしている!!」

管制室に、支倉の怒号がとんだ。握られた拳が、固いデスクを力任せに叩く。

「展開中の戦車部隊、左翼右翼ともにワイアームへの一斉砲火を行え! 敵はあの巨体だぞ! 当てられんとは言わせんっ!!」

「りょ、了解しました!」

「はいっ!!」

声に弾かれて、間宮、続いて楠本がそれぞれの部隊へ連絡を取り始める。

デスクが叩かれた瞬間、だれもが、自分が鞭打たれた錯覚さえ抱いていた。

そんな中、

「これは……――司令!」

高速でキーをタイプしていた赤沢が沈痛な面持ちで立ち上った。

「報告します! ベルヴァーは、一体ではありません!」

「……な、に?」

司令だけでなく、管制室そのものがどよめく。

それは、まさかの情報だった。

「これを見てください」

赤沢がキーをタイプすると、中央スクリーンが切り替わった。

戦略図のように自陣とワイアームが光点で表示されていた画面に、赤黒い空が映る。

どうやら、ギルディウス、ワイアームのほぼ直上らしい。

何百、何千メートルか上空を映す画面に、ゆらりひらりと、なにかが揺れていた。

ヘリや飛行機、鳥の類いではない。