「じゃあ、何者って答えたら信じるよ?」

「……」

「へへ。ま、それならなんだっていいじゃねぇか」

野々村はそう言って、答えない。はぐらかされたのだ。

たしかに、これで突然「奇術師だ」とか「魔法使いだ」とか答えられても、信じられない。666の人間でもないと言う。

何者ならば、信じるか。

(何者だろうと、信じちゃいないよ、お前なんか)

そう思いながら、しかし今は、野々村の背中を追う。

ここから脱出することが、今は最優先だった。