「とりあえず、とっとと出ちまおうぜ。息が詰まって仕方ねぇだろ」

鍵は、かかっていなかったのだろうか? いや、そんなはずはない。鎖の長さの関係で、扉には触れることも叶わなかったが……ここは独房なのだ。扉に鍵がかかっていないなど、そんなわけがない。

しかし、野々村はとても簡単に、というより、ただ普通に、扉を開けた。鉄と鉄の擦れる、甲高く耳障りな音が響く。

真人は、ただ驚いた。

こんなにも大きな音が出る扉を開けて、野々村は侵入してきたというのか。まったく、気付かなかった。そんな音、聞こえなかった。

ここへ潜入していること、突然現れたこと、枷を外した技、扉の鍵、そして開閉の音……

すべてに、納得がいかない。

「お前、何者なんだ?」

真人は結局、訊ねていた。

扉の外は、通路である。自分の収容されていたのと同じタイプの独房が、狭いカプセルホテルの入り口を並べたように通路の左右に連なっている。

壁の、足元と天井付近に等間隔で設置されたライトグリーンの常夜灯が、ほんのりと淡白く、野々村の横顔を照らしている。

その頬が、ニヒルに持ち上がった。