これでまだたった二度目の出撃だが、返事は決まっている。

「も~、焦らさないでよ」

と、レンはいっそおどけてみせた。

「早く言ってよね。出撃ってさ。司令さん」

ただの少尉であれば、666の司令にこんな口の聞き方は許されない。許されるわけはない。

だが、自分は少し、特殊だ。特別なのではなく、特殊だ。

ギルディウスとの繋がりがそうさせ、彼との出逢いがそうさせ、パイロットという代名詞がそうさせてくれる。

支倉のことは、『好きではない』で止まっている。同時に、『嫌いではない』でもあり、『嫌いになれない』とも言える。

すっぱりと嫌ってしまいたい。そう自分が思っているように、支倉も、嫌われてしまいたいだろう。

『――いいだろう』

、、、
だから――というわけでもないが、支倉はレンの言葉遣いを黙認する。

『死ぬなよ、木佐木少尉』

「当然。死ぬのはヤツよ」

強気な発言の陰に、今もまた、「行こうか――クレナイ」とレンは呟く。メガネを一度押し上げた。

『では、ギルディウス・マキナ=クリムゾン機、出撃』

閃く紫電と鋼鉄同士が鈍く擦れ合う音――

深紅の巨人が、トンネルの闇へと突貫していった。