ダイバースーツと同じ着方のパイロットスーツに袖を通し終えたレンは、少し身を屈めた。鏡を覗き込んで、片手で器用に口紅を出す。回転しながら出てきた紅を、サッと唇に引いた。上唇と下唇をきゅっと合わせ、パッと開く。唇が紅く鮮やかに潤った。

鏡に映る自分の頬を、そっと指でなぞる。

「やっぱ好きだな、赤って」

それは、血の色だから。自分の中にも流れている、命の証だから。鮮烈で、興奮する色だから。なにより、生まれた時から見慣れた色だから。ひょっとしたら興奮以上に、安心、するのかもしれない。

更衣室を出たレンは、長く赤い髪を頭の横で縛りながら歩く。口に赤いヘアゴムをくわえながら、鼻唄を刻む。もちろん、お気に入りの歌手の曲。ギルディウス・マキナがある格納庫へ着く頃には、いつものツインテールが出来上がっていた。

ふと、深紅に塗装されているクリムゾン機の横へ、目をやる。

一号機とは違い、東洋系のデザインをしたギルディウス・マキナが、そこに。鎧武者のような姿をしたその頭頂には、左右非対称な、三日月型の角があった。いかにも、兜というに相応しい。腰に大太刀が据えられているのだから、まさに武者である。