ピピピピ!
ピピピピ!

とそこへ、通信が入る。デスクに備え付けられている受話器を、手探りで取った。

「なんだ」

聞こえたのは、東海林中佐の声。

『司令。ベルヴァーを捕捉しました。現在、東より進行中。こちらへ、まっすぐ向かってきています』

「数は」

『一体です』

「一体だと?」

ケンタウロスの時で証明されたように、ベルヴァーは魔軍である。それが、たった一体だけで侵攻してくるとは。

なにかの罠だろうか。伏兵か、別動隊がいるのではないか。

勘繰った支倉に、

『それが、実は……』

東海林中佐は言い淀む。冷淡屹然な性格をした彼女にしては珍しく、歯切れの悪い言い方だった。

「どうした?」

『……それが、敵は一体なのですが』

「?」

『目標は地中を移動しているようで、はっきりとしたことはわかりません。が、衛星が捉えた姿だけでも、数百メートルを越えています』

「……」

『目標の移動速度と観測された映像などから、全長は三キロ、恐らく、ワイアームかと推測されます』

「そうか」