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膝を抱えていた。立てた両膝の間に、顔を埋めて。

そうすると、いったんなにもかもがリセットされるように錯覚した。

リセットされた上で、顔をあげる。自分はだれかと自問自答する。

「私は木佐木・レン・クリムゾン。……うん、私だ。だいじょぶ、生きてた」

ホッと一息ついて、安心感を得る。

「んっ、んぅ~……!」

両手足を伸ばせるだけ伸ばして、

「――っふぅ」

しまいには、一気に力を抜く。

管制室からは、帰還命令が出ていた。作戦が終了したならば、ギルディウスを民間の目に触れる場所に出しておく義理はない。

東海林中佐は支倉と違い実質本意で指示も的確だが、短気だ。うるさいので通信は切っている。もちろん勝手に。

損傷部分の修理やメンテナンスもあるのだから、帰還は早急にこそだろう。

が、今はもう少し、ここでこのまま、まどろんでいたかった。

「ん……しょ」

眠気とは違う、心地のいい無力感のまま、足の間にあるパネルを操作した。

ネット回線を開き、出撃前のチャンネルに合わせる。

お気に入りの歌手のライブは、終わってしまっていた。