「あのさ、空飛んでったやつ。でかいの。騎士っつぅか、なんとか兵団だとかの、鎧みたいなやつだよ。なんだったんだろうなあ」

「僕が知るか」

「お。お前、自分のこと僕っつータイプなのか。ほほう。そうかそうか」

だから、どうだと言うのか。

真人は歩を速めた。が、野々村は難なくついてくる。また少し速めても、結果は同じ。諦めた。むしろ耳栓がほしい。

辺りはだんだん、鼻を突く鉄臭さが香り始めていた。

第四市街地――先ほどまで戦闘が行われていた区域。ヤツらが暴れていた場所。アレが戦っていた場所。

真人は――どうしても――手に入れたかった。

なにを? 力を。

なんのための? ベルヴァーを殺すための。

それはなぜ?

(報復以外に、理由なんてあるもんか)

さっき、自分らの頭上を飛び抜けたのは〝力〟だと思った。

ベルヴァーを倒せる力。報復を叶える力。彼女の仇を取れる力。

自分の行動理念が、醜くてもいい、おぞましくてもいい。力がほしかった。

今の自分にはどうしたって、ベルヴァーに立ち向かえる力はない。

巨体を持ち、剛力を振るう凶暴なベルヴァーに、人間が生身で勝てる道理はない。