×



男の名は野々村といった。訊いたわけではない。ただ、男が勝手に名乗ったのである。

結局避難シェルターへ行くことのなかった真人を、野々村はあれこれと言ってくる。

「あのなぁ、結果的にベルヴァーが第四市街地でやられてくれたからいいものの、お前、あのまま敵が攻めてきたらどうするつもりだったんだ?」

「……」

「なあ?」

「……」

「なんとか言えよなー、お前」

「……ついて来るな」

「いいや、そればっかしは聞けんな。あんな自殺行為しでかす野郎、ひとりでほっぽり出せるか。今だってお前、どこ行くつもりだよ。そっち第四市街地だぞ。なあ。……なあって」

なあなあなあとさらにうるさい野々村に、嫌気が差す。まるでカトンボにつきまとわれているようだ。

自分は名乗っていないから仕方ないが、お前お前と呼ばれるのもいけ好かない。馴れ馴れしいのは嫌いだった。

「んーにしても、ありゃなんだったんだろうなあ」

と、赤黒い空を見やりながら、野々村は言った。視線の先では、黒く塗り潰された太陽が、明るいとは言えない、怪しい光を放っている。