溜め息をつく代わりに、支倉はスクリーンに背を向けた。

赤黒い肉塊にまみれ、血の雨に濡れた第四市街地。

あれがかつて、人々の活気と繁栄に溢れ、青空に照らされていた街かと思うと、いたたまれない。

「あとの処理は――東海林中佐、任せる」

「はい」

と返事をした無表情な長身の女性が、

「ギルディウス回収経路は第四市街地、0番ルートを使え」

「はい」

「救護班には、作戦区域に生存者がいないか捜索をさせろ」

「了解」

各部署、オペレーターへ指示を出していく。

支倉はそれを背中で聞きながら、管制室をあとにした。

甲高い排気音と共にしまった自動ドアに、少しためらいながら背を預ける。

そこでようやく、

「――なんて、時代になったもんだか」

どうしようもない嘆きを、ひとりの人間として、呟いた。

――その時、

ピッピッ、ピッピッ、と、支倉の胸元で音がした。

支倉が司令を勤め、ギルディウスを管轄している組織の所属章は、通信機の役割も担う。

小さなボタンを押して回線を繋げると、ピンバッジ式の所属章から細いアンテナが伸びた。

『――司令』

と、暗い水底から響く声が、ぽつりぽつり言ってくる。