ピピピピ!
ピピピピ!

「あー!? もぉーうっ!! なになにぃ? せっかく今からってとこだったのに――!!」

突然入った通信のせいで、真っ赤な髪をした少女はじたばたもがいた。

スポーツカーのシートもかくやという広くはない空間で、腕を上に、足を下に、伸ばしたり、縮めたり伸ばしたり。

少女の足の間にせり出している小型モニター。その中で今の今まで踊っていた歌手の姿は、もうない。

繰り返される呼び出し音に合わせて、黒を背景に『Calling』という赤文字が明滅し、レンに応答を急かしていた。

モニターパネルを押して、通信を繋げる。

「ぅはい、こちら木佐木・レン・クリムゾン~」

『なんだーおい、えらく不機嫌な声での応答だな、木佐木少尉』

「うげ、支倉……」

ニヒルな上司のだみ声に、レンはコーヒー豆を噛み潰したように顔をしかめた。

モニターからは意地悪な声。

『うげとはなんだ、うげとは。どうせお前、まーたギルディウスの回線を私的利用して、Gulenのライブ見てたんだろうが』

「否定はしないよ、こんちくしょう。私ゃGulen中毒だもん」

『アホなこと言ってるな。仕事だ』