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体は正面、顔は横向きで俯いている女性のシルエットが、闇の中に仁王立ちしている。

ぶら下げただけだった右手がゆっくりと持ち上がり、口もとへマイクを運ぶ。

正面へ視線を放った女性の唇が、「Shall we?」と呟いた――直後だった。

女性の足元から壁、背後、天井と、一挙にライトアップされていく。

フリルがあしらわれ、ところどころスリットの入った黒のタイトドレスを纏う女性の姿がはっきりと照らし出された。

赤い髪を頭のサイドで二つ縛りにし、右寄りに大きなバラの飾りをつけている彼女は、

「It's show time!」

の掛け声とともに、ステップを踏み始める。

同時に、ドラムからのイントロ。ライトが赤や黄色、青へとグラデーションを醸し出し、女性の立つステージを豪華に染めあげる。

ステージ手前の観客席が、ポップコーンが弾け出すように沸騰した。どよめきがホール中に反響し、色とりどりの蛍光ライトが揺れ始める。

背後の巨大スクリーンが点灯すると、赤い口紅を引いた美貌がいっぱいに映し出され、観客はさらにヒートアップした。

マイクを持った女性が、くるりとターンを踏み――