薄灰色の雲が空一面から細かい雨を降らせている。


朝。



いつもよりスラムには人通りが少ない。

というのも、今のトウキョーに降る雨はけして無害というわけではないからだ。

用も無いのに雨の日に外を出歩く者達は、あまりいない。




茉梨亜、は雨の日独特の冷たい空気の中目を覚ました。

「…なんか…すっごい変な夢見たよーな……あたしが二人?………なんだったっけ」

窓を見やると、しとしとと降るそれ。

「今日は出掛けようと思ってたのに…なぁ」


寝起きの低い声で呟く。



むくりと起き上がって、洗面所へ向かう。



洗面台の鏡が扉になっており、中には小物やらが入れられる様になっていた。

茉梨亜、は、それを無意識に開ける。



『ドサリ』


何かが、そこから落ちた。



「………」


暗い瞳で、茉梨亜はそれを見下ろしていた。