アザレアの花束を



「呂依」



地下からホールへ上がってきた俺を、玲さんが呼び止めた。




明日の計画は、誰にも言わないつもりだった。


玲さんにも、海さんにも。


言えば絶対に止められる。


ましてや、『愛とずっと一緒にいたいから』だなんて言えば、愛が玲さんや海さんに殺されるかもしれない。




だから、俺は平静を装って答えた。



「玲さん、どうしたんですか?」


「……正気だろうな?」



低く、尋常ではなさそうな声。


その言葉を聞いた瞬間、嫌な予感がよぎった。



「何が、ですか?」


「あの人間の少女だ。……その、聞いてしまったんだ」



『人狩り』から帰る途中だったと言う。


宙を飛んでいると、偶然俺たちの姿が見えたと言う。



俺の計画はバレてはいないらしかったが……





「行かせないからな」