「……ごめん」
俺は優しく愛を突き放して、そう呟いた。
今の俺にはそう言うしかなかった。
愛の表情なんて、とても見れなかった。
ごめん、ごめん……。
「私、呂依と離れたくないの。一緒にいてくれるだけでいいの……お願い……っ」
震えて上ずる声は、今すぐにでも壊れてしまいそうだ。
そう言って涙を流す彼女を堂々と抱きしめられたら、どんなにいいだろうと思う。
だけど、わかってしまったから。
愛が泣いている理由が。
「愛」
俺は彼女の名前を呼ぶ。
嗚咽をおさえ、涙を静かに流しながら顔を上げて俺を見る彼女。
「愛は……俺といれて、幸せ？」
眉を八の字に下げて、彼女は何も言わず、ただ頷いた。
彼女はそう信じているかもしれない。
だけど、違うよ。
違うんだ、愛。
