アザレアの花束を



「どうしたの?」



俺がそう訊ねると、愛ははっとしたような表情をした。


その愛を見て、俺もはっとした。



暗くてよく見えなかった。


……愛の目が赤くなっていた。


瞳に涙を溜めて、今にも壊れてしまいそうな愛。



そんな愛を見て、胸がギュッと締め付けられた。



今すぐに抱きしめたかった。


だけど、俺じゃダメな気がした。



「……ろ、い」



抱きしめて、彼女を安心させなければいけないのはわかってる。


何が悲しいのか、苦しいのか、俺にはよくわからない。


だけど理由を訊くのは後だ。


俺が頭の中で葛藤している最中、愛は震えた声で言う。




「ど……して、抱きしめてくれないの?」




その台詞を訊いたとたん、なんとなくわかった気がした。


愛の泣いている理由が。