アザレアの花束を



部屋の奥から女の声が聞こえた。



聞こえた、と思った次のとき。
ヒールのコツコツという音を響かせて俺の前に現れた。



「玲が拾ってくるなんて珍しい」



その女は真っ赤な胸元が開いたドレスを着て、
不敵に微笑んでいた。


紅い目に黒い髪のボブ。

スタイルもよく、
色気がある。



そして、

まとわりつく血の匂い。



この女もやはり吸血鬼なのか?


「髪が黒くても、瞳が紅くても
吸血鬼よ。私は」



……この女は俺の思っていたことを見透かしていたように言った。



「私は“海(カイ)”よ。この辺じゃ一番長く生きている」


「長くって……」


「少なくとも100年以上は生きているわ」



それを聞いて驚いた。

その女の容姿は20代前半に見える。



「不老不死だもの。当たり前だわ」