アザレアの花束を



特に俺もあまり気にはしなかった。


あのとき、
普通に俺に赤い月のことを教えてくれたし。


きっと深い意味はないのだろう。



それよりも、
俺は今見える“赤い月”のことで頭がいっぱいで。


俺は洋館を飛び出した。


空を見上げて、
手を伸ばす。


真っ赤に染まった月は、
まるで血の色のようで。


月に血をぶっかけたような色で。


いつかに見た、
零れ落ちた血の色のようで。



俺は頭を振って、
思考を停止させる。


これ以上考えてはいけないことは、すぐさま理解した。



俺は宙にそっと浮かぶ。


本当に、
すぐそばまで行けそうなくらい近かった。


俺は真っ直ぐに月を目指して飛んだ。




空を飛んでいるうちに、
森を抜け出そうとしていることに


俺は気がつかなかった。



そして、いつかの海さんの言いつけを忘れていた。