アザレアの花束を



玲さんはむくっと起き上がって、
窓の外を眺める。


辺りは薄暗くなり、
太陽と入れ替わりで月が昇っている。


その月だ。


いつもよりも近くに感じる月は、

そう、まるで。


海さんの瞳のように赤く染まっていた。



「この月か……」



玲さんはそっと呟いた。


俺はホール内を見渡し、
海さんを探した。



「海さんは?」


「人間のところだろ」



そっけなく玲さんは答えた。



「海さんも見てるかな」



俺が独り言のように呟くと、
玲さんは言う。



「海はこの月を嫌っているがな……」


「え?」



俺が詳しく訊こうとする前に、
玲さんはそっとその場を立ち去った。