アザレアの花束を



俺はその日から毎日、
月の様子を観察するようになった。


“今日は、どうだろう”


そう思うと、
だんだんと愛を忘れられるような気がした。



そして、時々地下の書庫に足を運んだ。


物語を読むこともあったし、

誰かの論文を読むこともあった。


何度か足を運んでみて、
気づいたことがある。


ここ、洋館のもともとの持ち主は研究者だったらしかった。


書籍に混じって、

手書きのレポートのようなものが雑に置いてあったり、

わけのわからないような図式が書いてあるものもあった。



そんな風に、
同じような毎日を過ごしていたある日。


とうとう、

“その日”がやってきた。



「玲さん!」



いつになく興奮した声で俺は玲さんを呼んだ。


ホールのソファーに“吸血鬼なのに寝ていた”玲さんは、
眠い目をこすりながら声に返事をした。



「……何だ」



少しかすれた声が、“まだ眠い”と言っていた。


俺は窓の外を指差して、
弾んだ声で言う。



「あれ!」