「多分、このくらいの時期じゃなかったかしら。私がその月を見たのは」
「本当ですか!」
そう喜ぶ俺を見て、海さんはクスクスと笑い出す。
「いつも通りの呂依だわ、本当」
……海さんの言う意味がよくわからずに、首をかしげていると、
「いいの」と誤魔化された。
「その月が見えるのは、大体月が出たばかりか沈む直前らしいわ」
「なるほど……」
「その月は人を惑わすほどの美しさ……と言われるわ」
俺はじっと海さんの紅い瞳を見る。
その月は、
きっと海さんの瞳の色に似ているのだろうと思った。
そう思うと、
より強くその月を見てみたいと思った。

