アザレアの花束を



『Red moon』


と書かれた背表紙があった。


月は黄色じゃないか、
と思いながら俺はその本を手に取った。


パラパラと本をめくると、
図も一緒になって説明されていた。


俺はその本をパタンと閉じて、
そのまま階段を昇った。



俺はランプの灯りを消して、ホールの隅に置くと、

椅子に腰掛けてその本を読む。



昔から、『赤い月』と言うのは

“不吉の前兆”と言われていたらしい。


だけど、
その本は『赤い月』の現象を事細かに説明してある。


それは占い的な現象ではなく、
立派な自然現象だということ。


けれど、
実際にその『赤い月』を見ると

その妖しさに心を奪われる人々が多かったらしい。



俺も、その月を見てみたいと思った。



どこかから帰ってきた海さんに、俺は訊ねた。



「海さん。『赤い月』って見たことありますか?」



突然、そう訊く俺に少し驚きながらも海さんは頷く。



「ええ。……いきなりどうしたの?」



俺はその本を見せる。

海さんは納得したように微笑む。