アザレアの花束を



「……大丈夫ですか?」



“誰か”の笑う声と入れ替わりで、
女性の声が聞こえた。


匂いでわかった。


人間だ。



「あの、とりあえず誰かを……」



慌てたように言う彼女に目をやる。

若い女性だ。


どことなく、愛に似ている。



と、
世界が歪んでいく。


モノクロだった世界が
赤く染まっていく。



“キミは吸血鬼なんだから”



そこからは感情よりも先に、体が動いていた。


しゃがみこんでいた俺は急に立ち上がり、
彼女をきつく抱きしめる。


状況に困惑しながらも、顔を赤らめている人間の女。



誰に習ったのかわからない、

教えてくれとも頼んでない。




首元に唇を沿わせる素振りを見せ、

牙を剥く。



感情とは反対に
体が勝手に求めている。



女の体は
だんだんと体温を失っていく。