俺はばっと彼女の方向に振り向き叫ぶ。
「偶然だ! 時間が経てば、すぐできるように……」
「できる? それはいつ?
いつかはできて、今はできないの?
……そんなのおかしいわ」
彼女の言葉に俺は黙り込む。
正直、焦りを隠せない俺はぐっと海さんを睨む。
「誰かを待たせているんでしょう?
とりあえず今は私が術をかけてあげる」
だけど、と彼女は付け加える。
「本能に押し切られている、とでも言いましょうか?
体が水を欲しがって
悲鳴をあげようとしている。
……意味がすぐにわかるわ」
俺は目を閉じて、
彼女の手から送られる力を感じる。
術がかけられ、
追い出されるように洋館を出された。
……どういう意味なんだ?
何が、
どうなって……
そう考えながら
森を抜けようと、宙に浮く。
だけどその様子はいつもとは違った。
いつもよりも
飛べる高さが低い。
気を抜けば、
いつでも地面に落下してしまいそうだ。

