「いつも、そうしておけば
無駄な期待に惑わされることも無い。
それに、人間の血だって簡単に吸え……」
「“立派”になります。
だから、
人間の血を吸うのは……まだ嫌です」
海さんは、落胆した表情で俺を見る。
俺はジャムの入った小瓶を手に取ると、
数日前に用意されていた自分の部屋へ入った。
自分の部屋へ戻る間際に、
海さんはこう呟いていた。
「本能には敵わない……
後になってツケが帰ってくるのに……」
「約束をしているわけでも無いのに、
呂依はちゃんと来てくれるのね」
灰色の空。
今にも雨が降りだしそうな天気の中、
俺と愛は街で会っていた。
嬉しそうに言う愛の一方で、俺はただ微笑むだけ。
「嬉しい……けど、何故“天気の悪い日”なの?」

