アザレアの花束を



俺は一歩も動くことができなかった。


そんな俺を見て、
海さんは寂しそうな顔をする。




「……彼女と貴方は違うのよ」



俺は、吸血鬼。



それでも、彼女といるときだけは
そんなこと関係ないと思っていた。




けど、


そんなの
ただの現実逃避だ。



「立派になりなさい。

じゃないと、もっと辛い想いをするのは貴方」



俺は手を震わせながら、海さんに問う。



「“立派”って、どうすれば立派なんですか?

“未熟”って、どうだから未熟なんですか?」



海さんは迷いの無い、紅い目で俺を見ると言った。



「本心を容易く他人に見せないで。

心の中では
いつも冷静でありなさい」



彼女の一言、一言が重い。