アザレアの花束を



俺はそのことに
たいして気にもとめず


瓶の中のジャムを人差し指につけて口に運んだ。



そのとたん
口の中に酸味と甘味が広がる、



はずだった。



今の俺の口の中には
ただ、ジャムがある、と言うだけで味が無かった。



俺はもう一度ジャムを舐める。


だけど結果はさっきと同じで。


いっそ、
ジャムまるごと食べてしまおうと思ったそのとき、



「やめなさい」



と、海さんは言った。



「やっぱり知らなかったのね」


そう言って、ため息をついた。

俺は呟く。



「吸血鬼……」



呆れたように俺を見つめる海さん。



「そうよ。


吸血鬼に人間の食べ物の味を感じる機能なんて、ないのよ」