冷たい、と言って彼女は微笑んだ。
俺は、温かい、と言って笑った。
この手を放したくなかった。
そう思ったのに、
先に放したのは俺だった。
「どうしたの? それ」
洋館に帰って、テーブルの上に置いた小瓶を見て
ソファーに寝転んでいた海さんは言った。
俺は誇らしげに海さんに言った。
「リンゴのジャムです」
「誰にもらったの?」
その質問に俺は黙りこんだ。
すると海さんは
くすくすと笑って言った。
「人間の女の子でしょう?
怒らないわよ、そのくらいのことじゃ」
俺はほっとして、
小瓶の蓋を開けた。
「海さんもいりますか?
絶対、おいしいですよ」
そのとたん、
海さんは寂しい顔をした。

