アザレアの花束を



俺はそのことに気にせず、目の前の男に言う。




「……愛に近づくんじゃねえ」



俺はそう言い終わり、男を強く睨んだあと、
放り捨てるように胸ぐらの手を放した。



その男が逃げていくのを俺は確認すると、
愛の方を向いて言った。



「ごめん。俺が来るのが遅くて……」



すると愛は首を振る。



「ううん。

もともと約束もしていなかったし、あんなのを振り払えない私が悪いの」



それに、と言って彼女は俺の目を見た。



「呂依は助けてくれたわ。

ありがとう」



彼女が俺を見ていると言うことに恥ずかしくなって、
つい目を反らしてしまった。



そのことに少し寂しそうにした彼女は思い出した、
と言うようにバックの中をあさった。



「これ、できたの。

よかったら食べて?」