「ねえ」
甘ったるい声で、海さんは囁いた。
「私が誰だか、わかっているわよね?」
その台詞を聞いたとたん、
俺は背筋が氷って、急いで洋館を出た。
この想いは、
きっと知られてはいけない。
それがわかっているから、俺は俺が憎いんだ。
同じ生き物だっら、
こんなに複雑にならずに済むだろう?
街に着いた俺は、さっそく彼女を探し始めた。
辺りをキョロキョロと見渡すと、すぐに彼女を見つけた。
鮮やかなピンクのワンピースを彼女が着ていたおかげで
見つけることは難しくなかった。
「愛……」
「やめてよ!」
俺は手をふって、
彼女のそばへ行こうと思ったとき。
彼女の叫び声が聞こえた。

