アザレアの花束を



「ジャムができたら、貴方にもあげるわね」



そう無邪気に言う彼女を見て、心がぱあっと明るくなった。



「本当に?」


「ええ。口に合うか、自信はないけど」



合うよ、と俺は言った。


まだ
食べてもいないのに、と彼女は言った。



それでもわかるんだ。


絶対美味いだろう。



「貴方、ここら辺では見ない顔だけど……名前は?」



彼女は首を傾げて俺にそう訊ねた。



俺の、名前……



彼、玲さんにもらった名前。



すっと呼吸を整えて、


そのたった二文字を言うのに
どれだけの時間がかかったのだろう。