……このリンゴを全部受け取ったら、
彼女はどこかへ行ってしまう。
それは嫌だ、
と俺の心が叫んでいる。
とっさに、俺の口から台詞がこぼれていた。
「落ちたリンゴって、食べても大丈夫なんですか?」
何を言っているんだ、俺は。
そんなこと言われても、
彼女を困らせるだけなのに。
彼女は最後の一個を手に取って、まじまじとそれを見ると
優しく微笑んで言った。
「確かにそのまま食べるのは難しいかもしれないけど、
ジャムにすれば、きっとおいしいわ」
そうなんだ、と俺は答える。
……会話が終わってしまった。
そう、残念に思う俺を見て彼女はとびきりの笑顔を見せて言った。

