俺は“やっていられない”と思って、
あの洋館へ戻ろうと振り返ったとき
「キャッ」
と言う声と共に、いくつかのリンゴが転がり落ちた。
俺はそのことに気がつくと、慌ててリンゴを拾った。
「すいません」
俺はしゃがんでリンゴを拾いながら、謝った。
その言葉に彼女もリンゴを拾いながら答える。
「いえ、私の方こそ……」
全てのリンゴを拾い終わって、彼女に手渡そうと顔を上げたとき、
偶然、彼女と目があった。
茶色い瞳に、
俺はすぐに虜になった。
「ありがとうございます」
そう言いながら俺の腕のなかからリンゴを受け取り、紙袋へ詰めていく彼女。
俺はそんな彼女を見ながら、
わけのわからない胸のドキドキに焦っていた。

