アザレアの花束を



「……玲さん」



俺はそのときから尊敬の意味も込めて、そう彼のことを呼ぶようになった。



玲さんはきっとクールなんかじゃなくて

感情が表に出にくいだけなんだ。






そして俺が吸血鬼として、しばらく経ったころ。


俺は玲さんに連れられ、人間の集まる街に来ていた。


天気は曇り。


太陽は姿を見せる気配がない。


「ご機嫌いかがですか?」



と、街娘に親しげに声をかけるのは玲さんだ。


黒い紳士的なスーツに身をまとった彼は、

親切そうな笑顔を振り撒いて俺の前を歩く。



一方の俺も、比較的明るい色のジャケットにジーパンを着せられた。


一体、何のつもりだと思っているころ

玲さんは急に立ち止まった。