「久しぶり…」
由香はニコッと微笑んだ。
俺が住んでいたアパートを見て「何か違う」と去っていった女の中の1人だ。
金目当てで俺と付き合ってた。
あの頃のハデなイメージとは違って、グレーのスーツを着て、黒髪を後ろでひとつで束ねている。
化粧はしているけど疲れた印象を受けた。
「久しぶりだな」
「悠翔とこんなとこで会うなんてね。結婚したんだ…」
「あぁ…。由香も結婚したんだろ?」
「うちは母子家庭。4歳の男の子が1人いるの」
由香がクスッと笑った。
「そっか…」
俺はそう呟くと、腕時計を見た。
「そろそろ行かなきゃ…」
「あ、ゴメンね…」
「じゃー」
「……うん」
俺は車に乗って、エンジンをかけると車を駐車場から出した。