「で……」



悠翔さんが言った。



「何?」



私は視線を悠翔さんの方に戻した。



「今、俺が乗ってる車を雪が乗ったらどうかな?」



はい?


私が悠翔さんの車に?


私は窓の外を見た。


駐車場が見える。


そこにある悠翔さんの車。


鏡のように磨かれた黒のベンツ。


そして再び視線を悠翔さんの方に戻した。


笑顔の悠翔さん。



「む、無理無理!」



私は首を大きく左右に振った。



「何で?」


「何でって…私には無理だよ」


「慣れれば大丈夫」




いやいや、そういう問題じゃなくて……。



「初心者マーク付けたベンツなんて見たことないよ」


「最近は、教習所でもベンツやBMWを使ってるとこ多いんだよ」


「そうなの?」


「あぁ」



悠翔さんはそう言うとコーヒーを一口飲んだ。