15の夜はティラミス・ガールズと共に

 「ティラミス初めてなの?」


 「ああ、基本的に甘いモノは食べないんだ」


 「えぇ?食べた事ないの? 勝手に『ティラミス・ガールズ』とかって、命名したくせに。」


 「甘いモノは嫌いだけど、甘いモノを尊ぶのは好きなんだ」寿は珍しく口が軽妙だった。「そうだな…それはミッキーマウスみたいなものだ。 俺は子供の時から、ディズニーの類はワザとらしくて大嫌いだけど、そういうので世界を彩ろうとする精神はやっぱり素敵なんだ。わかるだろ?」


 「さぁ」
 双子はティラミスを熱心に解体しながら、寿の言葉に耳を傾けた。


 「フロリダの出張から帰った父親が、娘にミッキーマウスのマグカップをプレゼントすると、その女の子は『わたし、ドナルドが好きなの』って、文句を言うんだ」
 
 寿は目を細めた。彼は確かに酷く眠かったわけだが、確かに微笑んだのだ。
 
「そういうのって、いくらミッキーマウスというキャラクターの商業的な側面を鑑みても、やっぱり誰も皮肉れやしないんだ。 そうだろ?」