田岡は病院の待合室にいた。
 
 外来患者に混じって、待合室の大型プラズマテレビが映す囲碁教室を見ながら、名前が呼ばれるのを待った。

 「やれやれ…」
 ここの庶務は、年寄りは誰でも囲碁のルールを知っている、と思っているのだろう。
 
 テコンドーの世界大会の映像の方が、まだ時間つぶしになる。

 
 ………
 
 病院からの検査結果が来たのは、なんと2日後だった。

 急を要し、また家族の同伴を求める文面から、よくない結果だったろう事は予想がついた。

 けれども人間とは図太い生き物で、自分だけは何とかなるんじゃないか、という思いもどこかにあった。

 でも一方で、癌だろう事も予想していたのだった…。

 
 「田岡さん、田岡寿男さん」
 看護婦の声が田岡を現実に引き戻した。