「じゃあ、なんでけなすのよ?」
 「倦怠感を建材に使ったようなこの街で育てば、そんな皮肉も出るさ」寿は車窓の風景に視線を移した。「これは綺麗とかじゃなく、赤血球さ。…生臭い感じだ……」

 ここは、東京へと続く五街道の一つが通る地方都市。
 
 寿の赤血球という表現もあながち間違いではなく、トラックはこの国の脳や心臓へと大量の物資を運んでいるのだった。


 彼等を乗せたワゴン車は、ほとんどの赤血球とはここで別れを告げた。前方は片側三車線の巨大な陸橋が待ち構え、それこそが彼等の次なる“キャンパス”だったからである。
 
 運転席に座る清田は、勘に任せてワゴン車を脇道に転がす。

 普段なら適当に駐車して、フェンスをよじ登るなりして辿り着く、コンクリート壁の“キャンパス”であるが、今回は運よく陸橋の側面に道があった。
 巨大なコンクリートの壁の脇を通る、人気の無いかつ見通しの良い小道。
 これは、“彼等の仕事”において完璧なシチュエーションだ。

 「さて、仕事に取り掛かろう!」清田は車を止め、手を叩いた。
 『ミッション・スタート!』と、双子は声を合わせた。