深夜だというのに、トラックは引っ切り無しに流れていた。この街で育った者としては、“どこまでも続く赤いテールランプ”は、『ロード』の中で虎舞竜が思った事とは違って、はっきり言えば大して美しくもない。
 高橋ジョージはどこの出身だったか、きっと田舎育ちじゃないのだろうか、と疑いたくなる…。

 「えぇ? ありゃぁ、名曲じゃない?」と、双子の片方が言った。…たぶん、左の座席に座ってるから、こっちが赤木美幸(あかぎ みゆき)だろう。

 「ぬゎんでも、ぬゎいような事が~♪」
 「ッ、うるせぇよ!」
 「痛てぇ!」
 助手席に座ったお調子者の沢北が歌い始めると、すぐさま運転席の清田が肩パンを入れる。二人のお決まりのパターンだ。
 
 その二人の遣り取りを、やれやれ、と冷淡に首を振ったのは、五人の中でも最年少の15歳、牧瀬寿(まきせ ひさし)だった。
 「名曲だってのは分かるさ。口ずさむメロディだ」
 
 「じゃあ、なんでけなすのよ?」と、今度はもう一人の双子、赤木智美(さとみ)が言った。