鉄格子の向こうには、見張りが持っていたと思われる槍を放り投げ、珍しくちょっと驚いた表情の加藤ちさが立っていた。

「あら…有栖川さんも入れられてるなんて…。まぁ、これではっきりしたわね。」

そう言うと、再びちさはいつもの笑みを浮かべた。

「はっきりって…?あ、それよりもここから出して欲しいんだけど…。」

「もちろん、そのつもりよ。」

ちさは手にした牢屋の鍵を見せてくれた。
さっき入れられたばかりだが、やはり牢屋の中は居心地が悪い。出してもらえると思うとほっとする。

「じゃあ、うみちゃんも一緒にここから出よう。」

そう言って振り返ると、厳しい表情でちさを見つめるうみの姿があった。

「あ、この子は知り合いで…。」

「忍び猫のちさ…。」

どうやらうみもちさのことを知っているようだ。しかし、忍び猫とはなんとも彼女にぴったりな通り名だ。

「あら、会うのは初めてなのに、私のこと知ってるのね。」

「そりゃ、優秀なナイトだって有名だもん。アリス、彼女は白の傭兵だよ。」

「は?」

私は一瞬、頭が真っ白になった。
今まで何度も危機から救ってくれたちさが、実は命を狙う白の傭兵だと言うのか。
しかし、それなら命を奪う隙はいくらでもあったはず。何より、同じ白の傭兵から私を守ってくれた理由がわからない。