たくさんのひとたちとすれ違う。 恋人に見られていたら …うれしいなぁ。 「どう?」 海が見えるところまで来て雫石さんが潮風に髪をかきあげながらアタシに聞く。 うわっ。 なんか雫石さん、カッコいい。 「ここは工業港やからそんなにキレイとかロマンチックとかはないねんけど」 「そんなことないです!」 アタシは必死になって否定する。 せっかく連れてきてくれたんだもの。 「そう言ってくれると連れてきた甲斐があったってもんやなぁ」 雫石さんは嬉しそうに言った。