「ほしたら、行くわ。 あんま帰り遅うならんようにね」 姉がアタシに言った。 アタシも精一杯の笑顔で 「ん、お姉ちゃんも」 と答えた。 2人の後姿を手を振ってぼんやりと見送る。 そしてゆっくりと2人は人ごみの中に消えていった。 アタシできるだけにっこり笑って別れただろうか? アタシの思い煩いが雫石さんに伝わらないように。 彼を困らせたくなかったから。 自分が惨めになりたくなかったから。