「足拭いたって靴が濡れてるから意味ないやん…」 「ああ、そうですねぇ… うーん、じゃあ家はどこですか?」 「百万遍… (ひゃくまんべん)」 「じゃここからそう遠くはないですね。 自転車で送ってあげますから」 「いい…別に」 なんでそこまで言うの? なんでこの人はどこまでもお人よしなんだろう。 「遠慮しないでください。 自転車の場所まではおぶってあげますから」 アタシはびっくりして大きく両手を振って断った。 「そこまでせんでも大丈夫! ホンマ、大丈夫やからっ」