「これです」
そう言いながら彼がカバンから出したものは電子辞書だった。
「あ…」
確かにこれはアタシの辞書だ。
こないだから見つからなくて美月に貸してもらったり授業も当てられても適当にごまかして。
でもなんでこの人が持ってるんだ?
「あの、この間の…携帯を取り替えたとき。
あのときうめちゃんのカバンから落ちたものがそのままで…」
ああ、鞄の中バラバラにしてしまった…あのとき。
「慌てて渡そうとしたけどうめちゃん、
そのまま地下鉄の改札抜けてしまって渡せなかったんです…」
淡々と話す。
淡々と…?
え?
ちょっと待って。
今さっきなんて?
うめちゃんって言わなかった?
なによ、
うめちゃんって!

