「ソフィア、何故コイツを庇うのだ? お前は私の婚約者であろう」
「はい」
「なら、邪魔をするでない。この客人に連れ込まれたのであろう……可哀想に」
「メルセデス様、……お言葉を返すようですが、それは違います。」
「何?」
メルセデス殿の表情が一気に険しくなってきた。
「私が彼と共にしたいことを望んだのです」
「この恩知らずが」
―― ビタァン
「ソフィア殿」
止める間もなく、メルセデス殿の右掌がソフィア殿の頬に一撃した。
彼女は、それでも彼の瞳を食い入るように見つめている。
「そんなにコイツの事がよいのか」
「彼は、私に翼を付けてくださいました」
「そうか。なら、その翼が無くなるようにしよう」
憎悪を増したままの表情で、彼は俺に刃を向けた。
穏やかな口調ではあるが、冷酷なまでの瞳。
「ニコラス殿、ソナタの国との国交は無かった事に致す」
「私の名前を何故?」
「やはりそうか、街でソナタを捜している者に出会ってな。調べさせてもらった」
国交――
彼のこの言葉で記憶のパズルが繋がった。
そうだ。俺はこのヨルデス国と国交の為の視察に来た。
そして、今目の前にいる彼はこの国の、――ヨルデス国王。
なんて事だ。俺のしたことは国交ではなく、宣戦布告になってしまったのか。
ガクリと肩を落とした。
普段は館の外にいる見張り兵たちまでもが、今この部屋の中にいる。
俺たちは、抵抗する事も出来ず、手を後ろに組まされた。
そのまま引き摺られるように、館の塔の天辺にある牢へと入れられてしまった。
勿論別々のものへと。
だが、俺は後悔はしてはいない。
ただ、彼女の事だけが気掛かりでならない。
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