「そう言やさ、アンタいつまでここにいられるの?」

 「明後日には帰ろうと思っている」

 「明後日か……」

 「うん、仕事あるからね」


 そう、帰る日が刻々と近づいている。


 「じゃ、午後は海行くぞ」

 「えっ!?」

 「実践しねぇとな」

 「……うん」


 プールの中でなら、怖さはなくなる。

 私にとって海は、まだ魔物だよ?

 だけどね、リキに手を引かれると不思議と大丈夫って思えるの。

 すごく安心するの。

 嫌な事全て忘れさせてくれる大空のような存在。

 この手を差し出されてしまうと、頑張らなくちゃって――

 勝手に答えている。

 頭と心がバラバラだよ。


 今は、ダイブする事だけに集中しなくちゃね?


 「お前、カナヅチって聞いていたけど、今までは水に顔浸けるのが嫌いなだけだったんじゃねぇか?」

 「そう……なのかな?」


 多分教え方が良いんだよ……なんて事は、悔しいから言ってやらない。
 
 
 四日間、ビッチリ見てもらえたおかげか? 水深3mまでなら潜れるようになったけど、この深さではサザエやワカメしか見ることしか出来ない。

 いつか

 私も青い魔法の世界見に行きたい

 
 「良かったな。帰る前に海ん中入れて」

 「うん、ありがとう」

 「これで、もう溺れる事はねぇな」

 「うん」

 「七海」

 「な…に?」

 「またこの島に帰って来いよ。俺は、毎年夏になったらここにいるから」

 「うん」

 リキは、最後に子供でも大人でもないあのひまわりみたいな顔になって誓いの印を私の口に収めてくれた。


 約束するよ

 必ず戻ってくる

 そして、一緒に見ようね。サファイア色した魔法の世界を



 **   サファイア色のマーメイド   **

       END


2009.07.20

花穏