リキは、暫し海を睨みつけている。


 「場所変えるぞ」

 「……?」

 「今日の波は少し高めだからな。先ずは潜れるようになるのが先だろ?」

 「……はい」


 浜から少し離れたところまで歩かせられた。

 林の奥に、小さな建物がヒッソリと建っている。


 「ここは、少し深いが潜る練習には最適だからな」


 建物の中に、奥行きが10メートルくらいの小さなプールが設置されている。


 「じゃ、梯子を一つずつゆっくりでいいから下りて行って」

 「はい」

 「いいか? 怖がるんじゃないぞ」
 
 
   コクリ

 首を縦に小さく振る


 「肺いっぱに大きく息吸い込んで、中に入ったらゆっくり息を出すんだ」


   スーーーッ

 言われた通り大きく息を吸い込む。


 「しっかり、目開けていろよ」

 リキに手を引かれ


   ブクン

 プールの下に
 
 あれ?

 昨日、千暁さんと潜った時は、水が怖くて怖くてしかたなかった。

 けど、怖くない。

 マスクをしていないから視界がボヤけるけど、リキの表情が読み取れる。


  ブハァ

 「よし、まぁ潜りは初めてにしちゃいいだろう。姉貴に上手く教わったんだな」

 「う、うん」

 「じゃ、もう一回」

 「はい」

 
 彼のスパルタ教育が続くけど、私も必死に学んでいった。