海の家でウェットスーツに着替え、基礎知識を千暁さんから教わり1時間くらいしたころだろう?


 「……来てやったぞ」

 
 えっ!?

 突然降って来た声の主はもう聞きなれた――


 「リ……キ?」

 何で彼がここに?

 状況が把握できない。


 「あ、やっと来たね」

 「あの……?」

 「七海ちゃんの専属コーチ。李樹はね、こう見えてもライセンス持っているんだよ」

 「こう見えてもは余計だ!!」

 「まぁ、そういう事だから安心して受けられるわよ♪ ウフッ(笑)……じゃね」


 それだけ言った彼女は、風のように消え去った。


 千暁さんの考えがイマイチ読めない。



 「始めるぞ」


 それだけ言った彼の格好は、何故かパーカーを羽織っただけ


 「ねぇ、スーツ着ないの?」

 「少しは潜れるようになったのか?」

 「えっと……」


 リキは腰に手を当て、私を上から下までシミジミ眺める。


 「格好から始めるのも良いけどさ、海をナメテかかるなよ!」


 あっ……

 リキも本物なんだ。

 海を愛する海の男の子。


 「……うん」